キャリア・カウンセリングの三大源流について
今日のキャリア・カウンセリングが出来上がるまでには、三つの源流が存在していたんだ。その源流というべき運動や理論を作った人たちのことを紹介するね。
源流① フランク・パーソンズによる職業指導運動
パーソンズさんは「職業指導の父」と呼ばれているんだ。パーソンズさんが生きていた時代は、産業革命によって社会環境が近代化に向けて激変していた頃。急激な経済成長と利部への人口集中が進み、劣悪な労働環境に激おこな人たちがどんどん退職したりしていて、失業問題が大きく取り上げられていた。
それによって、青少年が非人道的な単純労働にのみ従事させられたり、職を転々として不安定な職業生活をしているのを見て「いかん!」と思ったパーソンズさん。いろいろ調べていくうちに、青少年たちが適職につけないのは、機能不足とかそういう問題じゃなくて、場当たり的に仕事を探していることだと分かった。だから、人と仕事の適合を支援するための研究をするようになった。
そして、「職業指導運動」というものを始めるんだ。これがまさに、キャリア・カウンセリングの源流と言える活動だったんだ。
パーソンズさんは、『職業の選択(チュージング・ボケーション)』という本を書いているよ。
パーソンズさんの職業指導には理論があって、それは「特定因子理論」と呼ばれているよ。それは、人にはそれぞれ特性があり、それは人によって差異がある。それにぴったりとはまる仕事も存在している。それにはまる人と仕事の出会いが実現すれば、お互い満足するはずだ。人はそういう仕事を求める傾向がある……って内容。
パーソンズさんは、職業選択のベストマッチングのためには、
①まずは自分のことを知ること、
②さまざまな仕事の特徴を知ること、
③上記2つの合理的な関連づけが必要、
と考えたよ。
そんなわけでパーソンズさんの理論は理にかなっていて問題がないように思えたんだけど、「できる仕事に出会えることが幸せだ」とか「人はみんな仕事で満足を得たいはずだ」とか、人と仕事の関係性を厳密に、そして固定的に考えているところがあった。人間にはいろいろな価値観があり、得意じゃないけどやりたい仕事といったものも存在するからね。でも、パーソンズさんの理論によって、キャリア・カウンセリングという分野は拓かれていったのも事実なんだ。
源流② ソーンダイクらによる教育測定運動
最適な職業選択のためには、自分の特性というものを自分自身が知る必要がある。でも、それはとても分かりにくい。そんな時に、「存在するすべてのものは量的に計測できるはずだ」といったのが、ソーンダイクさんだったわけ。
その考えをもとに、ビネーさんが開発した「知能検査」、シュテルンさんが提唱した「知能指数」を組み込んで、ターマンさんが人の特性を測定するという「教育測定運動」を開始した。これが、キャリア・カウンセリングの第二の源流になった。ソーンダイクさんの考えを基に、ビネーさん、シュテルンさん、ターマンさんで繋いで作り上げた動きだったんだね。
不幸なことに、これは第一次世界大戦の兵士選別において大きく発展していくことになるんだ。
源流③ ビアーズの精神衛生運動
ビアーズさんは、自分自身もうつ病に何度も発症し苦しむ経験をしてきた。その中で、精神病患者がその奇怪な行動によって奇異の目で見られ、監禁するといったちょっとアレな扱いを受けている状況をなんとかしたいと考えたんだ。で、精神病院のクライアントたちの待遇改善運動を進めるとともに、精神病者を理解しようと努めた。その結果、一見すると異常に見える行動にはその人なりの理由があることが分かってきた。
ロジャースさんは、ピアーズさんの考えを引き継ぐ形で進め、クライアントと対話し向き合っていく「来談者中心療法」という本を書き、その理論を展開していった。それが、今日のカウンセリングスタイルになっていく。カウンセラーが「こうしなさい」という指示するのではなく、クライアントの成長を信じて、問いかけてクライアントに気づかせ、決断させていくスタイルはこうして生まれたんだ。