キャリアカウンセリングの三大源流① フランク・パーソンズによる「職業指導運動」
どんな世界背景だったのか
当時のアメリカは、産業革命によって社会環境が激変。急激な経済成長と都市部への人口増加が進んでいた。少し前の中国に状況が似ているかもしれない。工場を稼働させれば稼働させるだけ儲かる時代だったため、経営者は労働者の働く環境を蔑ろにしていた。辞めれば新しい人を採ればいい時代だったのだ。
しかし、劣悪な労働環境では人は定着しない。すぐ辞める人間が増えていった。仕事を求めて都市部に集まった大勢の人たちが辞めて、都市部に大勢の失業者があふれる。これは、犯罪が増えることにもつながるため、社会不安が増す状況だった。
パーソンズは、青少年が非人間的な単純労働にばかり従事していたり、職を転々としている状況を見て、「このままではいけない!」と考えた。なぜなら、仕事とはある程度長く勤めなければ経験は積めないし、収入は上がっていかないからだ。「とりあえず何か仕事に就かないと!」という気持ちで軽い仕事を選んでいることが、非人間的な単純労働にばかり従事していたり、職を転々としている状況を作っているのではないかと考えたのだ。調査の結果、それは確信につながる。
自分に合った仕事と出会うことができれば、そうそう辞めることはないし、長続きして経験を積み、収入も上がっていく好循環になるはず。そのためには、場当たり的な仕事選びをさせないために、適職に就くための指導が必要だと考える。それが、パーソンズの「職業指導運動」の始まりだった。
パーソンズは、人と職業の適合を支援するための研究を進め、その研究成果をまとめた本が『職業の選択(Choosing a Vocation)』だった。
『職業の選択』に書かれている原則
1. 職業はむやみに探すのではなく、きちんと選択するべき。
2. 職業を選択するときは、指導を受けながら、自己分析することも大切だ。
3. さまざまな仕事について調べるのが良い。都合がいい、たまたま見つけた、という理由で仕事を選ぶべきではない。
4. 職業選択をする際には、人間や職業について、その職業で上手くやっていくためには何が必要なのかなど、詳しい専門家からアドバイスを受けると、リスクヘッジになるし、学びにもなる。
5. 自己分析は紙に書いて行なうのが良い。そのほうが考えを整理できるから。パーソンズ教授の研究の最大の知見でもある。
ここに書かれている「詳しい専門家」が「職業指導カウンセラー」であり、キャリアコンサルタントの前身でもある。
パーソンズの3つの仮説
①人間一人ひとりの特性には差異があり、個人に適した職業――適職が存在する。同時に、仕事にも遂行するために要件の違いがあり、適した人が求められている。
②個人の職業満足は、その人と仕事のマッチ具合に関わってくる。
③人間は、自分に合った仕事を求める傾向がある。
パーソンズが考える職業選択の3要素
①適性・能力・興味・希望・資質・限界など、自分への徹底的な理解。
②その仕事に求められる資質・成功の条件・有利な点と不利な点、報酬、就職の機会、将来性といった知識。
③①と②の合理的な関連付け。自分はこういうタイプの人間でこういう能力が優れているが、この仕事に求められる条件とマッチしているという確信。
パーソンズが考える職業相談の技法
①クライアントのことを知る
②自己分析の支援
③意思決定の支援
④カウンセラーによる分析
⑤その仕事の展望の調査
⑥帰納法的推理とアドバイス(集めた情報をまとめてアドバイス)
⑦その仕事への適応への助言
パーソンズの基本的な考え
「丸い釘は丸い穴へ」
パーソンズのキャッチコピー
「職業指導の父」
パーソンズの理論
「特性因子理論」
個人の特性が、仕事に合う合わないと因子になるという理論
パーソンズ理論の評価
単純明快で常識的で実践的だった。キャリア・カウンセリングの基礎を築いたのは間違いない。しかし、個人と職業の関係を厳密に考えすぎている傾向がある。適材適所が大正解と考えているが、人間は適職でなくてもやりたい仕事という側面もある。そういった個人の感情までフォローできていない。
パーソンズの理論は何に活かされたか
GATB(一般職業適性検査)
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